9回    2007.aug.2                                      金子信造

 合気道を開祖に則して体得したくても、今では「武産合気」、「合気神髄」をはじめとする遺教によるほかすべはない。開祖の言説は託宣あるいは箴言ともいうべきもので、開祖が遺された“ことば”だけでは、理路を踏んでゆけば理解できるという形では表現されてはいない。しかし首尾一貫した論旨(言述の間に矛盾を含まない。それは原理論がその基底にある故である)を備えている。

 開祖の述べられたことの理解には、その基底にある出口王仁三郎の古神道、言霊学、つまり大本教学に基づけて理解することが求められる。

 私は大本を信仰している者ではない、しかし開祖は「私はこのように話すが、君たちは、君たちなりによく理解して、時代にあった言葉でそれを深め伝えて欲しい。」(「決定版・植芝盛平と合気道」U、合気ニュース、126p)とも言われ、信仰を押し付けるようなことはなさらなかった。そこで私は自分の理解のための覚書ノートを披露し、多くの方々の意見、感想を求めて、深めてゆきたいと思う。

 

日本は武の国

 「伊邪那岐(イザナギ)尊が初めて国土を形成された時、自転倒島をこしらえられた。これは矛のしずくが固まって出来たとあるが・・・絵にも矛の先からしたたるしずくから国が出来上がった様に描いてあるが、そうではない。国が矛のしずくから出来たと言うのは、武を奨励された、武の始めである。大地は国常立尊(くにとこたちのみこと)の時代にすでに出来ていたのである。」(出口王仁三郎全集、第一巻、皇道篇)

 

合気は愛気

 「伊邪那岐・伊邪那美二神が国土万物を生成したのは、二神に先立つ‘天つ神’のうち、とくに二柱の産霊(むすび)神の命令を実行したものである。この国土を‘修理固(おさめかた)め成(な)せ‘という天神の命令は、世界の始原における根本意思であり、伊邪那岐・伊邪那美二神から、天照大神・須佐之男命へ、さらに天皇・大国主命へと受けつがれていったのは国土を成せというこの命令にほかならない、産霊神の命令という形でこの国土万物を貫いている原理は’この国土(くに)を幸賜(さちはいたま)う御功徳(みいさお)‘である。つまり、岐・美二神の、生成のわざは、産霊神の’幸(さちはひ)‘のあらわれである’国土をいそしみ(大切に)思ほす大御心‘から生まれているのである。

 世界の原理は‘幸(さちは)ひ生(な)す’ことである。現にこの世界が、人や万物が存在するという事実は、この最初の命令、根源的な祝福が今なお貫徹されていることを示している。もしその祝福がどこかで途絶えたならば、今のこの世界はなかったはずだ・・・」(菅野覚明著「神道の逆襲」、講談社現代新書、p251252

 「全人類の住居たるこの天地の造化の創造主は、すなわちわが合気道の生みの親である。日本の武道の本質が合気即愛気じゃという宇宙的思想が全人類に、ありのままに素直に受けとられるのは当然じゃ。」(植芝吉祥丸著「合気道のこころ」講談社、p205)

 

 まず開祖の修行の結論であり、また合気道の大前提ともいえることをとりあげた。

これらの理解には「古事記」を読み解かなければならない。しばらく「古事記」を読むための基本と、言霊学のごくあらましを、私のノートによって開示しながらすすめる。最低この知識がないと開祖の言われていることは有難そうだが、チンプンカンプンだとなってしまう。今回は上記を提示するのみとし、読解のためのノートの開示等は次回からとする。

 

 

実技演習

@     片手取り一教 

A         二教    他

取りは片手を延べ、受けが触れたら産霊(むすび)する。むすんで受けの重心を吾が丹田につつみとり(合気し)一体化したまま受けを、収め、固め、極めあるいは投げて後の残心まで合気する。(終始、合気からはずれない)           以上



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