赤痣
合気道・不思議シリーズ第2回

笑い


栗山公伸

 四教や鎌手首で極められて、あまりの痛さに貧血症状を起こす事があります。
血の気が失せて自分の顔が青くなって行くのが分かる。
そんな時に極めている相手を見ると、必死の形相と思いきや必ず笑っている。
自分がこんなに痛がっているのに何んであんたは笑うのさ、といつも思う。
しかし、よく見ると顔は笑っているが目は笑っていない。
いわば不思議な笑いだ。

 荒井百合子さんを四教で極めた。
畳を突き破るほどの力で極めた。
あっと思った。
笑っている。
自分が笑っている。
自分も笑っていたのです。

 人間には二人の自分が居ると言ふ。
自分と、もう一人の人間は心臓や肺等の臓器を動かしている自分です。
いわば自律系の人間とでも言おうか。
自分が「心臓よ動け」と命令しても、自律系人間は自分の言ふ事を決して聞いてはくれません。
勝手に動いております。

 この二人の人間を結びつけるのは、呼吸機関であると言われております。
呼吸は意識でコントロール出来ますし、寝ている時等は勝手に動いています。

 荒井さんを極めた時、自分が笑ったのは、自律系人間が笑ったのだと確信しています。

だってあの時、自分は笑うどころではなかったからです。
自分も必死だったのです。
しかし、その時、一瞬喜びのようなものが、自分の体を貫いたのは、気のせいだったのしょうか。
でも何か(気?)を感じて笑ったのだと思っております。不思議です。

 工藤優さんには決してこんな事、やりません。                              





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